近現代ニッポン音楽の歩みを聴く 閉幕

なかなか、なかなか大変な会が終わりました。企画も、場所も、曲も。こちらでご案内した際は、事態をよく理解しておらず、十分なご案内が出来ませんでした。

まず企画ですが、日本製鉄紀尾井ホールの30周年を記念した主催公演だったこと。そして、明治からの、それまでの邦楽に対して作曲家たちがどのように新しいものを創造していったか、その軌跡だったこと。徳丸吉彦先生が監修だったことも十分に頷ける、壮大な企画でした。目玉は最後の、紀尾井ホールオーケストラと邦楽の初めてのコラボレーションだったとは思うのですが、前座と言うにはあまりに重責でした。

そして場所ですが、僕は初めて紀尾井大ホールの舞台に立ちました。オーケストラ、室内管弦楽をやるには丁度良い「洋楽」ホール。手を叩いて残響が何秒かなんて測る気も失せるほど、響きの良い、広いホールでした。そうなると気になるのが三味線の撥音です。少し気にしましたが多分クリアしたと思います。

最後は曲。今回僕は「千鳥の曲を主題とせる三絃曲」という、中能島欣一作品をこれまた初めて演奏しました。8分程度の曲なのですが、まーーーー難しい。そして新しい発見が幾つもありました。僕は学生時代に、後に津軽三味線奏者に戻った、当時は長唄三味線方だった大学の同級生の山口ひろしに、三味線の一の糸に依存しない曲というのは作れないのか?ときいたことがあり、それは無理だな、と当時彼が言っていたこと、そしてその後、やはり大学の一期上の田口さんから、山口が目まぐるしくコードの変わる曲を見事に流暢に弾いていたというのを聴いて、なんだあるじゃないか、と思ったのと、流石だな、と舌を巻いたことを思い出しました。そう。一の糸に依存しない曲、というのは、新しいものを作りたいと思ったときに当然至るべき帰結点だと思います。これを中能島欣一は今から遥か昔に、当然のようにやっていた。それがこの曲でした。コード弾き、つまりギターのように全ての絃を、それぞれ違うポジションを同時に押さえながら演奏する方法ですが、やはり多少なりとギターの心得が必要になってくる。ここでまたびっくりしたのですが、僕は以前THE TURTLESという、ビートルズのコピーバンドをやっていたことがありました。このバンドは全て、ギターもベースもドラムスも和楽器でやるというコンセプトのバンドでした。僕はそこで三味線でコード弾きをさんざんやっていました。古典邦楽においてこの技術を活かせることはないだろうな、と思いながら。さにあらず、です。まさかこの経験が、中能島欣一作品で、しかもこの大舞台で役に立つとは夢思わなかったです笑

共演の志村先生には大変お世話になりました。大阪芸大の先生であり、普段は尺八演奏家ですが、この日は「オークラウロ」という、フルートを縦にして、歌口は尺八の形をした金管楽器、を演奏しました。この先生のお話も、またたくさん面白い話があるのですが、まあ追々ということにいたします。

長くなりました。写真は、日本製鉄紀尾井ホール正面エントランスです。柱に自分の写真が原寸の3倍くらいであり、ちょっと気恥ずかしかった。普段会えない後輩達も別の曲で演奏していて、それぞれ見事な演奏でした。まあ。とにかく。ポシャらないで良かったです!

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