真磨箏 弐 四曲目

(上)最後の節切れのところで照明がパンチアウト、その後会場スピーカーから「鐘」の音を流してもらいその間に転換、幕内から掛け声、音出しとともに緞帳アップ、言葉にするとこんな演出でスタートしました。僕のイメージは(上)最後らへんから徐々に照明が暗くなっていき、真っ暗で緞帳ダウン、鐘の音、プログラムがかろうじて読めるくらいまで客電を上げる、だったのですが、舞台稽古で萩岡先生がパンチアウト、つまり一気に真っ暗にする、というアイディアを出してくださいました。先生は芸大、その他で様々な演出をご体験なので、その中からのアイディアだとご自分でも仰っておられました。採用させていただきましたが、一気に照明を落としたことで3人のシルエット、残像が目に残り、印象的だったとの感想をいただきました。自分では発想出来なかったこと、先生に感謝です。「鐘」の音で転換を繋ぐ、はただの思いつきだったのですが、どうせ録るなら石山寺行って録ってやろうと思い石山寺に電話したところ、除夜の鐘以外はイベントがないとつきません、とのこと、軽はずみに行かないで良かった(汗)。で、真磨箏 壱で登場した龍口寺というお寺、あそこは僕は小さい頃から数限りなくお詣りした場所で、鐘もつき放題(と言ってもむやみにつくものではないですが)なので、あそこに行けば録音出来る、幸いこの猛暑で人なんか一人もいないだろ、と思い、昼間行ったのですが…。甘かった。「鐘の音を録る、は、難しいよ」と、舞台その他でお世話になっております大森美樹様から教えていただいたのですが、本当にその通りでした。まず近くで録ろうとすると、ついた瞬間の衝撃で機械の上限を超えてしまう。ピークを振り切る、と言うのですが、「ゴーン」という音ではなく「がっ」という衝撃音だけになってしまうのです。では離れて録るとどうなるか。考えてみれば当たり前なのですが、外なんですよね。風、カラス、犬猫、車、江ノ電、踏切、それから人がいないと言ってもたまにはいるそのじゃりを踏み締める音、などなどなどなど!なるべく余韻を長く録りたいこちらとしては、だんだん静寂になっていって欲しいのに、鐘の音が小さくなればなるほど先程の自然音が大きく録れてしまう。4時間粘りましたが、帰ってヘッドフォンで聴いてみたらどれも使い物になりませんでした。前述の大森美樹様に泣きつき、サンプル音というものを出していただきそれを紀尾井に持って行った、というわけであの鐘の音はどこのお寺の鐘の音か、機械でミックスした作り物か、今となっては不明です申し訳ありません。自分で繰り返しを作ったのですが、鐘と鐘の間は約15秒、実際の転換中は12発演奏開始してからプラス1発、計13発、という結果になりました。ほぼ暗闇で鐘の音だけ12発、僕はプログラムが読めた方がいい、みんな飽きちゃう、と思ったのですが、大丈夫、暗闇でも皆様の緊張感は持続する、とのご意見で暗闇のままになりました。皆様いかがだったでしょうか。とにかくありがとうございました。
鈴木厚一先生に無理を言って、絹糸で揃えていただきました。自分としては真磨箏 壱でヒントをいただいた弾き方の違いがある程度試せたと思います。なにより余韻が長く、響きに濁りがない。絹糸やはり素晴らしいと思いました。そして、山登松和先生鈴木厚一先生の演奏力の高さ。萩岡松韻先生も含めて「なにやってんだ、早く俺たちのところまで歌えるようになってみろ」と示してくれたようで、とにかく嬉しかった。この(下)の歌詞は光源氏の供養のためのお経のようなもので、そのお経に源氏物語の巻名が盛り込んであるわけですが、菊池節子さんのプログラム解説がまた素晴らしかった。源氏物語をあそこまでわかりやすくまとめた物を僕は他に知りません。しかも難しくない。例えば「末摘花」という巻では「末摘花と出会う。契る。」以上。なんとわかりやすい!もっともっとおっしゃりたい事があるはずなのに、長大にならないようそしてわかりやすく、素晴らしい工夫が凝らされておりました。源氏物語を題材にした曲は他にもたくさんある中、このプログラムは僕のバイブルです。その菊池節子さん曰く、源氏物語は世に出てから数限りない人々を夢中にさせてきた、その人々にとって、紫式部自身が成仏してくれることは何にも変え難い喜びだったのであろうと。仏教理念に基づく人々の救済、という考え方なのであったのでないか、と。深く考えるきっかけをまた頂戴いたしました。感謝です。
最後の歌詞ひとくさり、もう最後に向かっていく頃は「打ち上げで何飲もうかな」などと考えてました。それくらい、余計な事を考える必要のない、邪念が全くない演奏でした。助けていただいた全ての先生、裏方の皆様、紀尾井ホール舞台スタッフ、そしてお客様。ありがとうございました。駆け足で2回もリサイタルやらせていただき、こんな幸せ者はおりません。この経験を活かして、これからの音楽活動、精進してまいりたいと思います。皆様の変わらぬご指導ご鞭撻、今後ともどうか何卒よろしくお願い申し上げます。
誠に
誠に
ありがとうございました。

